ジャック・ラカン
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「パニック発作について(パニック障害とは?)」パニック発作という呼び方は1980年代から主として米国において、DSMの分類とともに流行となった呼び方です。重要なことは、この症状は疾病単位としてパニック障害にのみ固有のものではなく、しばしばうつ病、うつ状態において(当院にいらっしゃる患者さんはこちらの方が多いです)初めて自覚できる症状として現れることが多いのです。パニック障害にしてもうつ状態、うつ病にしてもSSRIがよく効くケースが多いのですが、「どの科でも治療できるから」では駄目です。メンタル系専門医師の診断と治療を受ける必要があります。マスコミがパロキセチンをはじめとしてSSRIに対して警告を発したのも、十分な説明がないまま同系薬剤が使用されて来た背景と関連しています。診断についても治療についても、良心的なメンタル系専門医師でしたら十分な時間を割いてきちんとした説明をします。それがわれわれの職業倫理deontology1)なのですから。 以下のような特徴をもって教科書的には記述されています # 経過
注) 教科書的には広場恐怖Agoraphobia(古代ギリシャの都市国家はアクロポリスとアゴラからなるものでした。しかしヨーロッパ的な伝統的諸都市における広場とそこに集う人々との関係を、単純に古代ギリシャにおけるアゴラと古代ギリシャ人との関係とアナロジカルに捉えることはできないでしょう)を伴うか伴わないかが論じられていますが、そもそも日本にはヨーロッパにあるような広場は存在しません(もちろん単に広い場所は存在しますが)。このヨーロッパの広場が、それがある都市に住む人たち、そこに訪れて来た人たちに歴史的にどのような効果をもたらしてきたか(象徴的な意味をも含めてです)を論じ、此彼の都市といわゆる市民との関係の違いを、このAgoraphobiaという語に即して分析しているものは皆無ではないでしょうか。閉所恐怖Claustrophobia(ラテン語の動詞claudereからclaustrumは「閉ざされた空間」さらには修道僧が僧院で閉ざされた生活を送ることが換喩的に示された意味をもつようになりました)はアナロジーで論じてもかまわないのではないでしょうか。 小生がいま手にしているDSM-IV-TR(American Psychiatric Association)の433ペ-ジの広場恐怖の診断基準Criteria
for Agoraphbiaでは、「コード付けすることができない障害である」Agoraphobia is not
a codable disorderと書かれていますが、一方、441ページには300.22とコード化された「パニック障害の既往がない広場恐怖」Agoraphobia
Without History of Panic Disorder の記述があります。意味するところは伝わってきますが混乱を生みます。少なくとも論理的logicalでなく、論証的demonstrativeでもありません。そもそも障害とは疾病単位なのか症状なのか症候群なのか、コードと障害との関係は?この分厚い本のどこかにこの問いの答えとなるものが書かれているのでしょうか?
2013年にはDSM-Vが刊行予定となっていますが、編者の方たちの何人がAimez-vous le DSM ? Stuart
Kirk et Herb Kutchins, Ed. Empecheurs Penser en Rond, 1998を読んでいるのでしょうか。 |