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院長雑感
  ご挨拶
  みなさまから、荻本医院のHPは死んでいる、全然更新がなされていないから、とお叱りをいただき、この間の空白を埋めるよう、これからは、徒然なるままにとはいかない事情はありますが、いろいろ認めてゆきたいと思っております。
「穴を埋める」、あーあ人生とはこれに終始なんですね。親には育ててもらった恩義があり、これは返済不能の借りです。うつ病のキーワードであるドイツ語のSchuldの語義からして、借金、罪、負い目、義務なんです。親から預かった返済不能のものを自分の子供に与える=貸しをつくる。こうして人類は系統発生的に漸くのところ再生産が可能なんでしょうが、これすら日本においては怪しくなってきています。『嘘』も穴です。「わたしは嘘をついたことがありません」なんて言わせません。だれだって嘘をつきます。「クレタ人は嘘つきだ」といった命題はパラドックスに陥りますが、これを究極的に問いつめるとゲーデルの不完全性定理に行き着き、小生の脳みそではお手上げです。そうラディカルな論議に持ち込むのではなく、「だれだって、多少は嘘つきでである」でいいんじゃあないでしょうか。お前はなぜ嘘ばかりつくんだと問い詰められ、ドワネル少年は、「だって本当のことを言っても(大人は)だれも判ってくれないから」と屁理屈をこねますが、やはりすぐばれる嘘をついてはまずいですね。嘘をつくならば、その嘘がバレないように周到に!嘘を本当らしく見せるためには『最初の嘘』についてのコメントとしての嘘、そしてまたその嘘を本当らしく見せるために更なる嘘・・・と連続的に嘘を上塗りしてゆかねばなりません。consistance(数学では無矛盾性と翻訳されていますが)とはそうゆうことなのです。嘘で塗り固められた整合性もconsistantなのです。
多重債務に陥る(穴を埋めるにはどこか他のところで土を掘ってその土で穴を埋められるが、なんのことはない、多のところでやはり穴があいているんです)、会社のためだからと、顧客や取引先に対して二枚舌を使うことを強いられる(これも辛いですね。恩義と良心の呵責の板挟みですから)、どちらも穴をあけないように努力した結果なのですが(もちろん穴は塞げれません)、必然的に人は、とくに我が日本人は極度に自責的になってしまうんです。ラカンによれば、穴trouとは想像的な領域に属し、欠如manqueは象徴的、空虚videは現実的、といった領域に属しているので、むしろここに何らかの救いを見出すことができそうです。

「もういい加減に讒言、妄言、駄言はおしまいにしろ!」はいはいごもっともです。ではアクチュアルな問題(と意識してください)のひとつとして、まず労働問題について。

みなさん各紙で既に報道されていますので、先刻ご承知のこととは存じますが、ホワイトカラー・エクゼンプション(この和製英語っぽいタームを英語の堪能な方たちにお訊きしましたが、「なんのこと?ホワイトカラーの免除って、ホワイトカラーが免除されるの、それともホワイトカラーがなにかを免除されるの?」といった反応で、実際、wikipediaで調べると、きちんと書かれていますが外国語の当該する項目ゼロで、似たようなタームをgoogleで英語、フランス語で検索しましたが、どうも行政用語に相当する類義のタームは存在しないようです
[⇒http://ja.wikipedia.org/wiki/ホワイトカラーエグゼンプション])に関する法案を阿部首相は国会に提出するのを断念しました(1/16)。そりゃそうでしょう。各紙とも残業代ゼロ法案とグロテスクな見出しでずっと報じてきましたから。ところが実際は、労働政策審議会の労働条件分科会では、労働者の自律性をたかめる(このスローガンがほぼホワイトカラー・エクゼンプションに合致するものと思われます)こととバランスを保つため、いわゆる残業代の割増金の一律アップに関する審議も行なっており、こちらの方は日本経済新聞の1月7日の朝刊一面トップで、『残業代、割増率2段階へ:長時間労働是正へ義務化、月80時間超で50%』といった記事が出ておりお読みになった方もいらっしゃるでしょう。
しかしながら、ホワイトカラー・エクゼンプションが事実上廃案になったからには、割増金のアップには今度は経団連が反発するでしょうし、07年度の通常国会で審議され、08年度施行予定となっている労働契約法にも微妙な影を落とすことは必至です。労働契約法は、その端緒として平成15年の労働基準法改正に際し、18条の2の「解雇権乱用法理」を巡る労働契約に関する判例法理を書き込むにあたって、当法理が労働基準法のなかでは異質な民事上のルールになると認識されたことによるとされています。労基法は、労働条件の最低基準を刑罰、罰則付きで定め、それを実行させる行政刑法的な性格の法律です。労働紛争が絶えず(特に前掲の割増金不払いについての係争が多いと聞きます)、労働審判制度もスタートしました。更なる労働法制の整備の一環として、労働に関する民事法の中核となるべき労働契約法の成立を巡り、国会でどのような審議が行なわれるのか注意を払うべきです。

労働一般の問題について述べてきましたが、小生の日頃の診療においてかかわることの多い、労働安全衛生法の改正が昨年4月になされました。以下、厚労省のページの一部をコピペしました。http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/roudou/an-eihou/060401.html


1 長時間労働者への医師による面接指導の実施  (法第66条の8,第66条の9,第104条)
■対象 全ての事業場(常時50人未満の労働者を使用する事業場は平成20年4月から適用)■事業者は、労働者の週40時間を超える労働が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められるときは、労働者の申出を受けて、医師による面接指導を行わなければなりません。(ただし、1か月以内に面接指導を受けた労働者等で、面接指導を受ける必要がないと医師が認めた者を除きます。)
●上記の時間に該当するか否かの算定は、毎月1回以上、基準日を定めて行ってください。●医師は、労働者の勤務の状況、疲労の蓄積の状況その他心身の状況(メンタルヘルス面も含みます。)について確認し、労働者本人に必要な指導を行います。●事業者は、面接指導を実施した労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければなりません。●事業者は、医師の意見を勘案して、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じるほか、医師の意見の衛生委員会等への報告その他の適切な措置を講じなければなりません。■事業者は、次の(1)または(2)に該当する労働者にも、面接指導を実施する、又は面接指導に準ずる措置を講じるよう努めなければなりません。
1 長時間の労働(週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超えた場合)により疲労の蓄積が認められ、又は健康上の不安を有している労働者(申出を受けて実施)2 事業場で定める基準に該当する労働者
〜事業場で定める基準の例〜
・週40時間を超える労働が1月当たり100時間を超えた労働者及び2〜6か月間の平均で1月当たり80時間を超えた労働者全てに面接指導を実施する・週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超えた全ての労働者に、面接指導を実施する・週40時間を超える労働が1月当たり45時間を超えた労働者で産業医が必要であると認めた者には、面接指導を実施する・週40時間を超える労働が1月当たり45時間を超えた労働者に係る作業環境、労働時間等の情報を産業医に提出し、事業者が産業医から助言指導を受ける
■ 面接指導の事務に従事した者には、その実施に関して守秘義務が課せられま
す。※労働者本人による自己診断のための「労働者の疲労蓄積度チェックリ
スト」を厚生労働省ホームページで公開していますので、ご活用ください。
(2007/2/2)


 

ラカンのセミネール]巻『不安』の正規版が出ました(H16.5)。いま読み直し作業中です。近いうちにどこかの学会誌に『精神分析における不安について』といったタイトルで発表するつもりです。ラカンとて、このセミネールを通して、かれの不安を聴衆に伝えたかったのではないでしょうか。なにを前にしての不安か。まず「かまきり」mante reigieuseを前にしてです。なにについてか。大文字の他者の欲望についてです。〈かの女〉はお前のことをこんなに愛しているのだから、お前のことを喰っちゃうかもしれないぞ!大文字の他者である〈かの女〉とはInternational Psycho-Analytical Associationです。このセミネールを終え、結局サンタンヌを追われることとなったラカンは、最後にたった一回のセアンスだけのセミネールを開きます。タイトルは『〈父親〉の〈名〉』です。アルチュセールにユルム(高等師範学校)に招聘され、そこではかれは先ず高らかに進軍ラッパを吹き鳴らします。Excommunicationの宣言です。(2004/10/1)



 まずテーマ別コンテンツがどうなるのかといったことからご説明いたします。
 
うつは、近々SEやプログラマーの方たちに特徴的な、過重労働とうつとの関連について拙論を述べたいと思っております。なお、抗うつ剤については薬物療法で述べるか、トピックスで特に医薬品という商品の性質を踏まえた上、例えば治験の問題とからめて、その都度述べてゆくこととなります。
神経症は、不安神経症が工事中になっていますが、これまで書いてきたフロイトの不安理論をラカンのセミネールX巻(なお海賊版でしか読むことが出来ません。入手するには、Lipsy 《25, rue des Ecoles 75005 PARIS Tel. : 01 43 54 71 05 - Fax : 01 43 29 20 11》という書店に行って下さい。新宿のフランス図書に頼むとLipsyから取り寄せてくれますが、小生が取り寄せた別 のセミネールの海賊版は、途中から、ページの上下が逆になっていて、冊子を逆さまにして、ちょうど、日本語の本をよむように右ページ、次いで左ページとフランス語を読まなくてはならなくて、非常に読みづらい思いをしました。 乱丁、落丁の恐れもあり、またその巻が何分冊になっているかわからないと、一部分しか手に入らないこともありますので注意して下さい)を通 じて読み直すという作業になりますが、今まで書いてきたのとは違って、出来るだけ解り易く語り口調で書いてゆこうと思っています。
セミネールX巻 のタイトルはそのものずばりL’Angoisseですし、ラカンはここで、ある意味では極めて明快に、不安について述べていますから。異論はあるでしょうが、ラカンはフロイトのテキストを神経症者のテキストとして読んでいったのではと小生は思っております。
ともかくも、この1962−63年のセミネールに関していえば、ラカンは、不安の問題を、〈現実の〉対象というものを中心に据えて分析している点で、答えを見い出すことができなかった/見い出すことを躊躇した神経症的なフロイトを克服できている点で評価できると言えないでしょうか。
強迫神経症については未定です。
メンタルケアでは、むずかしい精神分析理論を述べるようなことはしません。小生が日頃、どのように患者さんに接しているかがみなさんにお解りいただけるように形式張らずに書きます。
ジャック・ラカンはセミネールXX巻の読解の試みとして小生が認めたものの一部を載せてあります。小生が10数年前、某出版社から委嘱され、原稿用紙に200枚弱書いた《3. 性的(無)関係の(非)論理》と《4. ラカンとアリストテレス[1] 》の冒頭の部分を、貼付しました。その当時書いたものは、全体で6部分からなり以下のタイトルが付されています。

 1.象徴界から現実界へ
 2.極限としての〈女性〉
 3.性的〈無〉関係の〈非〉論理
 4.ラカンとアリストテレス(1)
 5.ラカンとアリストテレス(2)
 6.バロック

本稿は全体として、セミネールXX巻の読解の試みとなっています。古代ギリシャ語や記号や図を入れて完成するには骨の折れる作業が要求されます。伏見家のお父様の善意に甘えてお願いしている次第です。
この内、1.象徴界から現実界へは気に入らなくなって、現在書き換え中です。これを書いた当時以降、小生は映画にハマり、日仏学院の映画の授業(梅本洋一さんのもの、フランス人講師のもの)を随分受けました。今書いているのは、《ゴダールのマリア》(原題Je vous salue Marie)論です。ゴダールはまさにune femmeを描き続けている、と小生は思っています。
ほかに、《男性、女性》にも触れます。
最後にトピックスとこの院長雑感はときに境界線が曖昧になることもあろうと思いますが。前者を出来るだけ医療全般 にわたるもので、理解するのにあまり専門性を要求されないマスコミの記事やそれについての小生のコメントを載せることにし、後者は小生の讒言、妄言、極めてイレギュラーな発言も交えて、しばしば、医療という枠を取り払っていろいろ書かせていただくことにさせていただきます。(2004/6/1)

 

 

   
 
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